光重合型コンポジットレジンは、自家重合型レジンに比べ、審美性、操作性、機械的強度など優れた種々の利点を備えている。しかしながら、光重合型レジンは、窩洞上方の光源に近い部分のレジンから重合が始まるため重合収縮がレジンを窩低から引き剥がす方向に作用し、窩壁適合性が自家重合型レジンに比べ劣るという欠点を有している。しかしながら、光重合型レジン修復物の欠点を根本的に解消するために必要な、重合収縮応力の緩和法についての研究はほとんど行われておらず、光の強度や照射法がどのように光重合型レジンの重合挙動と重合収縮応力を変化させ、レジン修復物の窩壁適合性と窩洞内のレジン-象牙質間の微小な接着強さに与える影響を数値的に測定した研究は皆無である。 本研究の目的は、抜去歯にC-factorの異なる窩洞を形成し、臨床術式に従い光重合型レジン充填を行い、通常の光照射法と現在までに著者が見い出した重合収縮応力を緩和する光照射法の2種の光照射法を用いて重合を行い、光重合型レジンの窩壁適合性への、重合収縮応力緩和効果を有する光照射法の有効性について検討する。また、象牙質窩洞に積層充填法を用いて光重合型レジン修復を行い、積層充填法の使用が窩底部のレジン-象牙質間の微小な接着強さに与える影響をmicro-tensile bond test法を用いて検討することにある。 平成10年度の研究により、光重合型レジン修復物では、C-factorの大きさに関わらず、レジン面から照射チップを1cm離して10秒間照射した後、照射チップをレジン面にできるたけ近づけて50秒間照射する重合法を用いると、辺緑封鎖性並びに窩壁適合性が最も良好となることが示された。また、積層充填法を用いてもI級窩洞窩低部象牙質における微小接着強さの向上は認められなかった。
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