1)糖尿病患者における歯周疾患の罹患状態についての調査 平成12年度は、平成9年度に本学医学部付属病院内科に通院する糖尿病患者と東京都杉並区高井戸保健センターで成人歯科健診を受けた非糖尿病患者を対象に、糖尿病に関する現病歴、治療状況、合併症の有無と一般健康状態、および歯周疾患の罹患状態に関して調査した結果を、喫煙と歯周疾患の罹患状態の関係について分析して第78回IADRで発表した。調査はアンケート形式で行い、全身健康状態に関する質問15問と歯周疾患に関する質問を20問設定した。回答者の内訳は、糖尿病患者110名(年齢30〜79歳、男性60名、女性50名)、非糖尿病患者110名(年齢30〜59歳、男性28名、女性82名)であった。糖尿病患者は2名はType1で、他の108名はType2と診断された。分析結果から、糖尿病患者は非糖尿病患者に比較して歯周疾患に罹患している比率が大きく、さらに罹病期間、血糖のコントロール、肥満、喫煙は歯周疾患の罹患状態に影響していることが示唆された。 2)歯周治療が代謝調節に及ぼす影響についての研究 代謝調節が良好および良好でないType2糖尿病患者8名を選び、初期治療を行った。歯周組織の臨床評価として歯周ポケットの深さ、歯周ポケットからの出血、細菌学的評価として歯周ポケット内の歯周病原性細菌の有無を調べ、血糖のコントロールとしてはHbA1cとグルコースの濃度を測定した。初診時と再評価時の状態を比較すると全ての患者において、歯周ポケットの深さ、歯周ポケットからの出血は減少した。5名の患者では歯周ポケットからの出血が減少が著明であった。4名の患者で歯周ポケット内の歯周病原性細菌の減少が見られた。血糖のコントロールについては4名の患者においてHbA1cが改善し、このうち3名は歯周ポケットからの出血の減少が著明であり、初期治療が血糖のコントロールに良好な影響をもたらす傾向が見られた。しかし、このHbA1cの改善は統計学的に有意ではなかった。
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