研究概要 |
平成9年度においては,提出した研究実施計画に基づき,抗菌性モノマーMDPBを含有するプライマーおよびアドヒ-シブを調製し,その重合性ならびに硬化前・後の抗菌効果をin vitroで評価した。まず,MDPBを市販のセルフエッチングプライマーおよびアドヒ-シブに配合し,最終濃度で1,2,5%のMDPBを含有するプライマー3種と2.5%のMDPBを含有するアドヒ-シブ1種を試作した。これらをKBr discに湿布し,FTIRを用いてプライマー・アドヒ-シブ複合体の重合率を測定したところ,MDPBを含有しないコントロールを含めていずれの組合せでも有意差は認められず,60-65%の高い重合率を示した。一方,寒天平板拡散法で硬化前のプライマーのStreptococcus mutans,Lactobacillus casei,Actinomyces viscosusに対する抗菌性を,また硬化前のアドヒ-シブのS.mutansに対する抗菌性を調べたところ,MDPBの配合により明らかに抗菌効果が増強されることがわかった。また,補助金により購入した多本架低速遠心機を用いてS.mutansのPBS懸濁液を調製し,これに試作プライマーを30秒間接触させた後の生菌数を測定した結果,MDPBの配合濃度の上昇に伴って殺菌性が増加し,5%含有試料では非常に強い殺菌効果が認められた。さらに,低速遠心機を用いて調製した菌液を硬化したプライマーまたはアドヒ-シブ表面に播種して培養した結果,硬化試作プライマー/アドヒ-シブが菌の増殖抑制効果とわずかな殺菌効果を有することが明らかとなった。なお,上記の抗菌効果の評価実験は,すべて補助金により購入したバイオクリーンベンチ内で行った。以上のように,本年度の研究より,抗菌性モノマーMDPBの配合によるプライマー/アドヒ-シブの重合性への影響は認められないこと,およびMDPB含有プライマー/アドヒ-シブがその硬化前・後にう蝕関連細菌に対して抗菌効果を発現することが確認された。
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