研究概要 |
歯周病細菌Actinobacillus actinomycetemcomitans(Aa)およびPorphyromonasgingivalis(Pg)の鉄獲得機構について,前年度の研究結果を基に引き続き研究を遂行し,以下のような成果を得た。 1. Aaについて AaY4株から鉄結合蛋白フェリチンをコードする遺伝子をクローニングし,塩基配列を解析し,その特性について調べた。その遺伝子は,486bp(161アミノ酸)と498bp(165アミノ酸)の2つ並んだopen reading frameから構成されていた。それらは,Haemophilusinfluenzaeのフェリチン様遺伝子と高い相同性(夫々80%および85%)が認められた。Aaの菌体には大腸菌抗フェリチン抗体と反応する2種類の蛋白がウェスタンブロット法で確認でき,それらは遺伝子の塩基配列から推定される分子量に夫々相当していた。mRNAレベルでは好気条件でその発現が増加していた。Aaのフェリチンは鉄獲得や保持だけでなく,酸素の影響(毒性)にも応答しているようである。 2. Pgについて Pgの近縁のBacteroides fragilis(Bf)のヘミン結合蛋白hemin-uptake protein A遺伝子(hupA)を手がかりにPgの増殖に必須であるヘミン獲得に関連する遺伝子を捉えようと試みた。本年度はhupA遺伝子と相同性のある遺伝子をPgFDC381株からPCR法により増幅し,増幅された遺伝子断片(約1.3kbp)の塩基配列を解析し,その特性について調べた。その結果,PgではBfのhupA遺伝子に相当する遺伝子は赤血球凝集素あるいは蛋白分解酵素遺伝子であった。Pgはヘミンを結合するというよりはむしろ,ヘミンの豊富な赤血球に獲り付き,それを分解(破壊)し,積極的にヘミンを獲得していると考えられる。
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