歯周組織の再生における歯根膜細胞の機能をより明らかにするため、ヒト歯根膜細胞から骨原性細胞をクローニングし、その機能および非骨原性細胞との相互作用を解析する研究を立案した。本年度はまず、ヒト歯根膜細胞の個体差についてを老化の観点から明らかにする目的で、2例の高齢者(55歳以上)由来細胞と2例の若年者(22歳未満)由来細胞を用いて分析し、以下の知見が得られた。 1.培養ヒト歯根膜細胞をそれぞれ8から9か月の長期培養を行い、生存曲線より求めた集団倍加回数では、若年者の細胞がいずれも25以上を示したのに対して、高齢者の細胞は15から17と低下していた。次に、高齢者由来の細胞では、若年者と比較して培養早期から増殖速度が低下し、さらに継代に伴って(細胞老化)も同様の変化が認められ、歯根膜細胞の増殖能における細胞老化と個体老化の密接な関連性が示唆された。 2.歯根膜細胞にPDGFを添加すると、高齢者および若年者細胞のいずれも増殖速度が亢進した。 3.骨原性細胞のマーカーであるALPase活性については、高齢者の細胞は若年者に比較して、低下していた。 4.骨組織に存在し、組織修復と密接な関連が示唆されているSPARC(Secreted Protein Acidic and Rich in Cystein)の発現についてノーザン法を用いて分析したところ、高齢者と若年者の細胞間では顕著な差は認められなかったが、細胞老化に伴ってSPARCのmRNAの発現が増加していた。
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