研究概要 |
レジン接着に及ぼす象牙質歯髄複合体の病態生理の影響解析を目的として,ヒトと歯牙構造が類似しているビーグル犬の犬歯を用いて,in vivoおよびin vitroにおけるレジン象牙質接着界面の微細形態学的差異を透過型電顕(TEM)を用いて観察した。またX線微小分析法(XMA),微小硬度測定法(MHT)および二次イオウ質量分析法(SIMS)を用いて樹脂含浸層の元素分析と微小硬さの関連性を検討した。 in vitroでのインパーバフルオロボンド(FB)およびクリアフィルライナーボンドIIΣ(LB)の接着界面をTEM観察した結果,FB及びLBともに約1μmの厚さ樹脂含浸層を形成するとともにその直下の健全象牙質の2〜3μmの深さまで移行層の存在が確かめられた。これに対してin vivoでは樹脂含浸層の形成が阻害されており,特に3カ月では樹脂含浸層が消失していることが示唆された。XMA及びSIMS分析からは,in vivo3カ月後にFBの接着界面において10μm前後の深さまでフッ素が浸透していることが示された。MHT分析からは,in vivoおよびin vitroで有意な差は認められなかった。 以上の結果から,in vivoで形成された樹脂含浸層は中長期的には消失する可能性があることが示唆された。さらにin vivoにおいてレジンから徐放されたフッ素イオンが樹脂含浸層を通過して健全象牙質へ浸透することが示され,中長期的に樹脂含浸層が消失したとしてもその直下の脱灰象牙質が再石灰化することが示唆された。
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