研究概要 |
レジン接着に及ぼす象牙質歯髄複合体の病態生理の影響を解析することを目的として、ビーグル犬の生活歯を用いてin vivoレジン象牙質接着界面を免疫組織学的手法を応用したSEMで観察するとともに、抜去予定のヒト第三大臼歯咬合面I級窩洞に最新の市販レジン充填を施し、接着界面のSEM観察と微小引っ張り強度(micro-tensile bond strength)を測定した。 全身麻酔を施したビーグル犬の大臼歯歯冠部象牙質I級窩洞にin vivoにてクリアフィルライナーボンドII(LBII,クラレ社)またはインパーバフルオロボンド(FB,松風社)を充填し、3カ月後に接着試料を採取し免疫SEM観察した結果、樹脂含浸層の形態は極めて不明瞭であり、チュブリン抗体陽性を示す象牙細管内突起様構造物が約75%の象牙細管に認められ,突起様構造物の存在によりレジンタグ形成は著しく阻害されていた。 さらに抜去予定のヒト第三大臼歯咬合面I級窩洞にLBIIおよびFBを充填し、3カ月後に抜去しSEM観察した結果、樹脂含浸層はほとんど形成されておらずレジンタグの形成も大きく阻害されていた。微小引っ張り強度もLBIIで15.8±3.5MPaであり,FBでは14.5±4.7MPaであり,in vitro健全象牙質での接着強度に比べて有意に低下していた。接着破壊形態としては凝集破壊の割合が大きかった。 以上の結果から、in vivoビーグル犬およびヒト生活歯でのレジン接着の耐久性はほぼ同様の傾向を示し、術後3カ月で接着強度が50%以下に大きく減少することが明らかとなった。さらに接着界面の微細形態の経時的変化として樹脂含浸層が不明瞭になるとともにレジンタグが消失することが示唆された。
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