ラット歯肉増殖症モデルを用いて、免疫抑制剤サイクロスポリンA(CsA)或いは降圧剤ニフェジピン(Nif)を経口投与し、以下の方法にて歯肉増殖症の発症機構について考察した。 薬物投与後、55日目まで経時的に下顎大臼歯部歯肉より全RNAを分離し、通報にてRT-PCR法を用いて各々I型コラーゲン、コラゲナーゼmRNA発現量をコントロール群と比較検討した。CsA投与群では8日目で対照群の約半分となり、それ以降も著明に抑制された。コラゲナーゼmRNAの発現レベルは、15日目以降有意に抑制された。Nif投与群においても、CsA投与群と同様に時間経過と共にそれぞれのmRNA発現量は抑制された。また、同様にRT-PCR法によりCsA投与ラット歯肉において、線維芽細胞の増殖及びコラーゲン線維産性を促進するTGF-β発現量を測定すると、30日まで差は認められず、55日では約半分に抑制された。 この増殖歯肉部では炎症を認めず、炎症のない組織では線維芽細胞によるファゴサイトーシスにより主にコラーゲン線維が分解されるため、I型コラーゲン線維で表面処理したラテックスビーズを用いて、歯肉より線維芽細胞を分離培養しそのファゴサイトーシス能を測走した。CsA8日間投与群由来線維芽細胞のphagocytic cellの割合は5.8±0.8%、対照群は51.8±3.2%となる。CsA30日間投与した場合は、9.9±1.5%、Nif投与群は13.2±1.0%、対照群は33.3±4.9%となり、薬物投与によりコラーゲンファゴサイトーシスの抑制が明かとなった。 以上のことから、コラーゲン線維の分解抑制により歯肉増殖症が惹起されることが示唆された。
|