研究概要 |
この研究の目的は,好中球アポトーシスの特異的な誘導による歯周組織破壊の制御機構について,特にアポトーシスを誘導する主要なシステムと考えられているFas/Fas ligandとその細胞内シグナル伝達系に着目し,歯周組織の炎症・免疫制御機構における好中球アポ卜ーシスの役割について検討するものである.本年度は,LPSによるアポトーシス遅延のメカニズムが,アポトーシス誘導の主要メカニズムの一つであるFas/FasLに関与するか否かをタンパクおよびmRNAレベルで検討した.培養上清中の可溶性Fas(sFas)および可溶性FasL(sFasL)の定量を行った結果,sFasはLPS処理群および未処理群でいずれも1時間後から検出され,その発現はLPS処理群において増加する傾向を示した.一方,sFasLはLPS処理3時間後から検出された.これらの結果は,ELISAによるsFasおよびsFasLの定量結果と一致していた.Fasはalternative splicingにより5つのvariantが存在することが明らかにされている.そこで,どのvariantが存在するかをRT-PCR法によって検討した.その結果,ウエスタンブロットで唯一検出されるFas Exo6Del以外にExo3およびExo4を欠損しているvariantの存在が明らかとなった.さらに定量RT-PCR法によるFasおよびFasLのmRNAレベルを検討した結果,Fas mRNAの発現はLPS処理群で有意な増加を示したのに対して,FasL mRNAの発現はほとんど変化を認めなかった.これらの結果は,P.gingivalis LPSによる好中球アポトーシスの遅延メカニズムとして,sFasの細胞外への遊離促進に伴う膜結合型Fasとの競合作用と膜結合型FasLの遊離が部分的に関与している可能性を示唆するものである.
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