研究概要 |
我々は,P.gingivalisが成人性歯周炎のポケット内,また再発や難治性のポケット内から高頻度に検出されること,A.actinomycetemcomitanceは若年性歯周炎のみならず,成人性歯周炎患者からも25-30%に検出されることを培養法により確認した.臨床細菌学的に,歯周炎の発症,病態をとらえるためにはより簡便で再現性が高く迅速に特定細菌を検出できる方法が望まれる.そこで我々は,P.ginigivalisとA.actinomycetemcomitanceのDNAプローブ法による検索を短時間で行うことを目標とした.100℃加熱DNAプローブを試料DNAと直接10分間反応させ,温度が自然に下降しアニーリングするようにした.また75℃0.2%SSC/0.1%SDSで洗浄効率を高めた.操作は約2時間で終了した.検出限界は総菌数10^4個/試料であった. 次に歯周炎患者の細菌叢の検索を行った.被験者は歯周炎患者55名468部位とし,初期治療後については9名58部位の歯周ポケットを検索した.培養法との一致率はP.gingivalis88%,A.actinomycetemcomitanc67%であった.P.gingivalisの検出率とPDおよびBOP群の間に有意な関連性が認められた.A.actinomycetemcomitanceの検出率とPDとの有意な関連性は35歳以上で認められたが,BOP群の関連性は無かった.P.gingivalisの検出率は臨床症状改善部位のみで有意に減少し,A.actinomycetemcomitance検出率は治療後,有意には減少しなかった. 本簡便DNAプローブ法は,迅速診断,歯周治療法の選択,細菌学的な治療効果判定のチェアーサイドテストとして,臨床的に有効であることが示唆された.
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