研究概要 |
光硬化型グラスアイオノマーセメント(以後,光セメント)の歯質接着性を向上させる効果を有する専用プライマーの開発に伴う研究の一環として,象牙質質接着性の向上に有効であった試作プライマーに関して,機能性モノマーとしてリン酸エステル系モノマー(BisMEP)を5%含有し,溶媒をアセトンとする試作プライマーを用いた場合のエナメル質接着力,エナメル質処理面ならびにセメント-エナメル質接合界面のSEM観察を行い,以下の結論を得た。 1.リン酸エステル系モノマーを含有したプライマーのエナメル質接着力は,アセトンの含有率10%のものが最も高い値を示し,接着試験後の破壊挙動は,接着破壊とセメント内での凝集破壊をを示した。対照としたデンティンコンディショナ-処理した光セメントより明らかに向上を認め,光レジンに相当するものであった。 2.プライマー処理エナメル質面の観察では,試作プライマーの組成によって異なるエッチングパターンを示した。すなわち,研磨痕の除去状態で比較するとアセトン含有率0,10および20%の試作プライマーで研磨痕は完全に消失しエッチングパターンが明瞭に出現した。 3.エナメル質接合界面のSEM観察では,いずれのプライマーを用いた場合でも1.0μmの耐酸性のタッグを認めた。試作プライマーとの接着界面では。光レンジで観察されるマイクロメカニカルリテンションと同様の接着機構を形成するものと考えられた。 以上の結果からグラスアイオノマーセメント専用の試作プライマーを使用することによって光セメントのエナメル質接着性の向上が可能であることが示唆された。
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