研究概要 |
TIMPsはMMPs共通の内因性インヒビターとしてその活性調節に関与する一方、インヒビター機能とは独立して、広範囲の細胞に強い増殖活性を示すことが明らかにされている。本研究は破骨細胞の骨吸収機能に増殖因子レベルで血清中に含まれるTIMPsがどのような影響を与えるかを検討した。正常FCSに含まれるTIMPsの影響を除くために抗TIMP-1抗体(IgG7-21B12),TIMP-2抗体(IgG68-6H4)を用いたアフィニティーカラムでTIMPフリーのFCSを調製した。これらFCSを10%の濃度でα-MEMに加えた。破骨細胞は生後1日齢のウサギ長管骨より分離した。ウシの大腿骨より直径6mmのディスク状の骨片を調製し48時間培養した。培養後、骨片を抗コラーゲンタイプI抗体を用いた免疫染色を行い、骨片上に形成された吸収窩を可視化して顕微鏡下で定量した。また同様な方法でTIMP-1,2フリー群と培地中にリコンビナントTIMP-1,2を加えた群との比較も行った。さらに破骨細胞数に対する影響を検討する目的で細胞懸濁液をスライドグラス上に接種し、それぞれの培地で同様の期間培養した後、TRAP染色を行い顕微鏡下でTRAP陽性で多核の細胞をカウントした。また免疫細胞化学的に骨髄内の破骨細胞と乳歯の破歯細胞でのTIMPsの出現を検討した。その結果、正常FCSの培地に比べTIMP-1フリー,TIMP-2フリー,TIMP-1,2フリー培地で培養した骨片上に形成された吸収窩は減少していた。TIMP-1フリー培地よりTIMP-2フリー培地でより吸収窩は減少していた。さらにリコンビナントTIMP-1,2を加えた群ではTIMP-1,2フリ一群に比べ高い値を示した。TRAP陽性の多核細胞数は正常培地とTIMPフリー培地の間に有為差はなかった。また骨髄内の破骨細胞と乳歯の破歯細胞の細胞質内にTIMPsは存在していた。以上の結果から、本研究において、これら血清中のTIMPsが培養期間中に破骨細胞数への影響は見られないものの、破骨細胞の骨吸収能の発現には促進的に作用していることを明らがにした。この結果はTIMPsの関与が種々の細胞において報告されているような細胞増殖のみでなく、細胞機能の発現にも関与している可能性を示唆している。
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