糖尿病は成人病の代表的疾患であり、日常的な疾患でもある。そのため臨床においては、糖尿病を合併する患者に対する歯科治療の機会も多い。特に感染に対する抵抗力が減弱しているために、慢性疾患が重症の経過をたどることも少なくない。本研究では、自然発症で得られた糖尿病動物(GK Rat)に実験的な根尖病変を形成し、その病変に及ぼす全身的因子としての糖尿病の影響を組織学的ならびに組織形態計測学的に検索した。その結果は、以下のとおりである。 1)GTT検査の血糖値においては、通常の非糖尿病ラット(JCL Rat)の対照群では約100mg/dlの値を示したが、GK Ratの実験群は400mg/dl以上と、対照群と比較して全実験期間を通じて有意に高い値を示した。 2)組織学的ならびに組織形態計測学的検索においては、根尖病変の露随後2、4週の実験群と対照群とを比較したところ、歯随壊死の状態、根尖病変の面積に著明な差は認められなかった。 これらのことから、糖尿病ラットと非糖尿病ラットにおいては、病理組織学的にも組織形態計測学的にも両群の間に有意な差は認められず、根尖病変の進展や拡大における糖尿病の影響は明らかではなかった。しかし、糖尿病は遺伝や食事をはじめとする多くの因子が相互に絡み合い複雑な病態を示す事が分かっているので、今後はショ糖溶液を水道水の代わりに与え、さらに耐糖能を悪化させて、同様の実験および酸性フォスファターゼ染色、免疫染色を行っていく予定である。
|