平成9年度の実験において、我々は自然発症で得られた糖尿病動物NIDDMモデル(GKRat)に実験的な根尖病変を形成し、その病変に及ぼす全身的因子としての糖尿病の影響を組織学的ならびに組織形態計測学的に検索した。今回は、ショ糖溶液を同ラットに投与し、耐糖能を悪化させ、糖尿病の悪化程度が根尖病変の進展にどのように関与するのかを明確にするために、根尖病変を組織学的ならびに組織形態計測学的に検索した。その結果は、以下のとおりである。 1) GTT検査の血糖値においては、通常の非糖尿病ラット(JCL Rat)のショ糖溶液投与群とショ糖溶液非投与群では著明な差は認められなかったが、GKラットのショ糖溶液投与群とショ糖溶液非投与群はJCLラットと比較して有意に高い値を示した。 2) 組織学的ならびに組織形態計測学的検索においては、根尖病変の露髄後2、4週で比較したところ、GKラットのショ糖溶液投与群では、GKラットのショ糖溶液非投与群、JCLラットのショ糖溶液投与群およびショ糖溶液非投与群と比較して、歯髄壊死、根尖部歯根膜の炎症が促進され、根尖病変の面積は有意に拡大していた。 これらのことより、NIDDMモデル動物であるGKラットを用いた本研究の結果から、糖尿病の病態の悪化という全身的な要因が根尖病変を進行させることが推測された。今後は同様の実験において、酸性フォスファターゼ染色、免疫染色を行っていく予定である。
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