平成11年度の実験において、平成10年度と同様に我々は自然発症で得られた糖尿病動物NIDDMモデル(GKラット)を露髄し実験的根尖病変を形成した。週齢は10年度と同様にし、J-1群(普通食JCL)、G-1群(普通食GK)、J-2群(ショ糖溶液JCL)、G-2群(ショ糖溶液GK)の4群に分け、さらに詳細に病理組織学的に検索した。露髄後4週における根尖病変の組織的所見において、根尖部には潰瘍が存在し根尖部歯根膜組織の炎症性細胞浸潤と根尖部歯槽骨の吸収は2週のものよりも強くなっていた。また、歯根にも吸収が認められた。さらに、ショ糖溶液投与GKラット(露髄後4週)においては他群よりも大きな膿瘍が存在し、その周囲の歯根膜にはさらに強い炎症細胞浸潤が認められた。歯根や根尖部歯槽骨の吸収も広範囲になり根分岐部歯槽骨はほとんど吸収し、遠心根の病巣と交通しているものもあった。組織形態計測学的観察も同時に行い、ショ糖溶液投与GKラットはどの週齢においても他群に比較して有意に増加していた。上記のことから、露髄後2週から4週へと週齢を増すと根尖部における炎症、骨吸収は増大し、さらに2週と同様にショ糖溶液投与のGKラットは他群のものよりもさらに炎症は増大することが示唆された。そして、平成10年度の実験同様、糖尿病の病態の悪化という全身的な要因が根尖病変を進行させることが今回の実験からも確認された。今後の研究課題として糖尿病状態にあるラットの口腔内細胞叢と感染根管内細菌叢をGKラットを使用して検索している予定である。
|