研究概要 |
臨床では,特に治療を困難にする要因が認められないにもかかわらず,自発痛,打診痛,圧痛あるいは浸出液などがとまらない症例に遭遇することがある.これらの難治性根尖性歯周炎については,多くの症例報告がなされており,そのいくつかは原因菌に言及している.しかし,難治性根尖性歯周炎症例を対象に系統だった細菌学的研究は行われていない. 本研究の目的は,難治性根尖性歯周炎の成立に関与する細菌を明らかにするために,難治性根尖性歯周炎症例を臨床症状に基づいて分類し,根管を介して採取した細菌種との相関を検討することである. 本年度の計画に基づいて,難治性根尖性歯周炎症例を臨床症状で分類しつつ,根管を介して試料を採取した後,直ちにチェア-サイド嫌気培養システムを用いて嫌気培養し,その後研究室にて分離,二次培養,グラム染色と菌株の-80℃での凍結保存を行った. 現在,8症例の難治性根尖性歯周炎症例に対して細菌学的検査を行っている. 症例は,持続的鈍痛,打診痛を主訴とする5症例と瘻孔の再発を主訴とする3症例からなっていたが,すべての症例から細菌が検出され,難治性根尖性歯周炎が細菌感染によって引き起こされることが確認された.分離細菌は,いずれも通性嫌気性グラム陽性球菌と通性嫌気性グラム陽性桿菌が優勢であった. 難治性根尖性歯周炎症例の臨床症状と原因菌との相関を検討するには,さらに多くの症例に対する検討が必要と考えるので,次年度からの研究計画に基づいて,引き続き試料の採取を行うとともに,保存細菌の同定を進めていく予定である.
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