研究概要 |
目的:歯周病関連細菌に対する免疫応答,とりわけナイーブT細胞の認識する抗原を同定することを目的とした。 材料・方法:歯周病関連細菌:P.gingivalis FDC381株;菌体成分の分画:連続分取型SDS-ポリアクリルアミド電気泳動装置を用い,SDSならびにβ-メルカプトエタノールで変性させた菌体成分を分子量で分画し,分取した;分取した菌体成分に対するT細胞の抗原認識:分取成分とともに培養した健常者末梢血単核球のbromo deoxyuridine(BrdU)取り込み能によって調べた。 結果・考察 1)P.gingivalis菌体成分を,10kDaから40kDaの範囲に50画分に分画した。 2)末梢血単核球の分取菌体成分に対する抗原認識は,被験者によって異なった。約2/3の被験者は,ほとんどすべての画分を認識したが,約1/3は,限られた画分のみを抗原認識した。 3)P.gingivalis全菌体で刺激したときに末梢血単核球のBrdU取り込み能の低い被験者が認識する抗原が限られた画分に集中することが明らかになった。このことは,これらの抗原が免疫応答を抑制するT細胞クローンを誘導する可能性を示唆するものと考えられた。 これらのことから,P.gingivalisの感作を受けていないと考えられる個体にもP.gingivalisの分画成分を認識するT細胞が存在し,その認識の様態には個体差があること,また抑制性のT細胞のみを誘導する個体ではP.gingivalis菌体すべてに対する免疫応答が抑制される可能性が示唆された。
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