研究概要 |
チタンの加工技術の進歩により床義歯のメタルフレームにも適用されるようになってきた.一般にチタンは生体親和性がよいといわれるが,プラーク沈着およびそれに起因する床下粘膜の炎症,う蝕,歯周疾患におよぼす影響についての研究はほとんどみられないため臨床実験的研究1として健常成人の被験7名にコバルトクロムと純チタン製の同一形態のクラスプ維持型上顎パラタルストラップ鋳造床を2組ずつ作製,48時間連続装着させ,その間被験者には通常に摂食させ,かつ口腔清掃は行わないこととする.48時間後,プラークを染め出し,舌側歯面のプラーク付着の状態を未装着および各々の材料間で比較検討したところ,鋳造床装着群は鋳造床未装着のコントロール群よりプラーク付着が多い傾向があった.その後口腔清掃を許可するが鋳造床自体は未清掃のまま口腔内に引き続き計7日間装着し,鋳造床口蓋部のプラーク付着についても検討した.方法として撮影写真をパーソナルコンピューターの画像処理の手法により,プラーク付着の投影面積率を算出したところ研磨面側へのプラーク付着はほとんどみられず,舌等による自浄作用が機能しているが,粘膜面側ではプラーク付着率の個人差が大きい.実験2として被検側残存歯数3〜4本の患者3名(上顎2名,下顎1名)にオーバーレイデンチャーを装着し,その際コービングに接触する部分は歯内縁部を含めチタンおよびコバルトクロムで鋳造体を製作後レジン床部に接着し,また左右口蓋側側方部ないしは舌側側方部にメタルプレートを模したチタンおよびコバルトクロム製鋳造金属板を粘膜面側,研磨面側双方にレジン床に接着し,支台歯およびメタルプレート部の観察を左右側で材質を変えて行ったところ大きな差異はみられず,支台歯および粘膜の健康を維持するにはアレルギー等の問題を除外すれば,金属の材質そのものより他の要素の方が大きいと思われる.
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