研究概要 |
顎運動は左右の顆路とアンテリオールガイダンスによって規定される.アンテリオールガイダンスの適否は,顆路に対してだけではなく,顎口腔系全体との調和という観点から評価されなければならない.そこで,本研究では顎機能に軽度の障害のある25歳〜41歳の3名の被験者に,正常者での研究結果に基づいて顆路から導いたアンテリオールガイダンスを与え,顎運動,咀嚼筋筋活動を測定し,アンテリオールガイダンスの決定法を顎機能という面から検討を行った. 中野が求めた理論式y=0.82x+2.36(y:側方切歯路のZ-実角,x:平衡側顆路のZ-実角)に基づいて,3名の顎機能異常者のアンテリオールガイダンスを緩傾斜,あるいは急傾斜にした上で,ガイドの部位にも変化を与え,臨床的なアンテリオールガイダンスの決定法を顎機能面から検討して,以下の結論を得た. 1. 理論式から算出される歯のガイドの方向を目標値にすると,歯のガイドを緩傾斜にする症例と急傾斜にする症例のあることがわかった. 2. 目標値に基づく歯のガイドの設定によって, (1) 臨床症状が消退する症例もあった. (2) 顎運動は特に顆路に影響を及ぼすこともなく,円滑に行われた. (3) 左右咬筋,側頭筋前部,側頭筋後部は正常と見なせる筋活動を示した. 3. 顆路を基準として歯のガイドの方向を求める理論式が顎機能にもつ意義が明らかになった.
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