研究概要 |
機械的外力によって調節されると考えられる細胞応答機構を、マウス培養骨芽細胞およびヒト歯根膜細胞を用いて解明することを目的として研究を行った。遠心培養によって荷重負荷環境で培養した骨芽細胞は、対照群より高い細胞増殖率を示す。この荷重変化による細胞増殖の変動は、フローサイトメトリーで細胞周期の各頻度を解析した結果、S期が促進(荷重負荷時)または抑制される(荷重分散時)ことによって、細胞周期が変化することを示唆する結果が得られている。そこで初年度に当たる本年は、荷重負荷した(60Gで遠心培養した)マウスMC3T3-E1細胞の増殖促進のメカニズムを解明するため、細胞内情報伝達系の受容体の1つと考えられている細胞接着因子でああるインテグリンサブユニットβ1,α1,α2,α3およびαVの遺伝子発現の変化を、それぞれに特異的なプライマーを用いてPCR法で予備的に解析したが、対照群との間に明確な差は認められなかった。このため、現在それぞれのインテグリンに対する抗体を用いてその局在性に変化が認められるか解析中である。また、遠心力による荷重負荷よりも、生体環境により近いと考えられる静水圧をマウス骨芽細胞に負荷する系を開発するため、試行錯誤を行った。しかし、専用の装置のない状態で安定して48時間以上、一定の荷重条件(〜300kPa)を保つ方法は困難であったため、現在はカバースライド上に播種した細胞を、市販の注射筒内で加圧して培養する方法を試している。これまでの予備的な実験結果から、約100kPaの静水圧を加えて、48時間培養すると、MC3T3-E1細胞の増殖率は約10%増加することが観察されているが、これが有意な差であるか否かは現在検討中である。
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