機械的外力によって調節されると考えられる細胞応答機構を、マウス培養骨芽細胞およびヒト歯根膜細胞を用いて解明することを目的として研究を行った。遠心培養によって荷重負荷環境で培養した骨芽細胞は、対照群より高い細胞増殖率を示す。この荷重変化による細胞増殖の変動は、フローサイトメトリーで細胞周期の各頻度を解析した結果、S期が促進(荷重負荷時)または抑制される(荷重分散時)ことによって、細胞周期が変化することを示唆する結果が得られている。 そこで荷重負荷した(60Gで遠心培養した)マウスMC3T3-El細胞の増殖促進のメカニズムを解明するため、細胞内情報伝達系の受容体の1つと考えられている細胞接着因子であるインテグリンのαおよびβサブユニットの遺伝子発現の変化を、RT-PCR法で解析した。しかし、対照群との間に明確な差は認められなかった。また、遠心力による荷重負荷よりも、生体環境により近いと考えられる静水圧をマウス骨芽細胞に負荷する実験を行った。カバースライド上に播種した細胞を、市販の注射筒内で約100kPa(1kg/cm^2)の静水圧を加えて24時間培養した結果、MC3T3-El細胞の増殖率は対照の無加圧群と比較して若干の増加傾向を示したが、有意な差はとしては認められなかった。このため、細胞増殖に関連すると思われる細胞接着因子(インテグリンβ1)や細胞骨格系(マイクロチューブルやマイクロフィラメント)に対する抗体を用いて荷重分散培養(clinorotation)、遠心培養および静水圧下で培養した培養骨芽細胞における染色性の違いを調べた結果、対照群と加圧・荷重群との間には明確な違いは認められなかった。しかし、荷重分散培養群は、マイクロフィラメントの形成が若干抑制されることを示唆する結果が得られた。
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