研究概要 |
歯科材料による細胞毒性の一次標的部位は細胞膜にあると考えられるが,この一次標的部位である細胞膜と歯科用レジン材料との動的相互作用に関する報告も殆どないのが現状である.歯科用レジン材料の構成成分の多くは脂溶性が高いのでそれラ材料の為害作用の一次標的部位である細胞膜との相互作用が考えられるので,精製歯科用レジンモノマーによる細胞膜脂質の微環境の状態変化とニュートラルレッド(NR)法による細胞毒性試験法との相関について検討した.ヒト臼歯歯根膜由来のPL細胞を用い,NR法による細胞毒性試験を行った.更に歯科用レジン硬化体を各種溶媒に浸漬し、高速液体クロマトグラフィーで溶出物の同定も行った。50%の細胞に毒性を発現させる濃度は精製モノマーを24時間処理した場合ではBis-GMA>trimethylolpropane trimethacrylate (TMPT)>ethylene glycoldimethacrylate(EGD)≧ 1,4-buthane diol dimethacrylate(BD)>1,3buthylene glycoldimethacrylate(BG)>methyl methacrylate-(MMA)->triethalene glycol dimethacrylate(TEGDMA)の順に毒性が強く発現した.1-(4-trimethylaminophenyl)-6-phenyl-1,3,5-hexatrieneで細胞を蛍光ラベル化した後,蛍光異方性及び偏光度を自動偏光解消測定装置を装着した分光蛍光光度計(FP-777H,日本分光)で測定し,レジンモノマー添加後のそれらの変化を検討したところ,その変化は細胞はBis-GMA>EGD>TMPT>BG=MMA≧BD>TEGDMAの順でほぼ同じであった.これらの結果と精製歯科用レジンモノマーを24時間処理した細胞毒性試験法から得られた結果との間に非常によい相関性が認められた.更に硬化体の溶出物の解析から、水溶性溶媒でも各種構成成分が溶出されていることが明らかになり、特にTEGDMAは浸漬直後から溶出されていることが明らかとなった。また、Bis-GMA由来と考えられる物質も溶出されていることが明らかとなった。
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