研究概要 |
本研究では,溶液から無機材料を合成する湿式のゾル-ゲル法応用によって,新機能を有するシリカ系ガラスセラミックス材料を調製し,その合成過程について機器分析学的検討を加えた.また,歯科材料としての応用可能性についても検討を加えた.以下に得られた研究成果の概要を記す. (1)塩基性触媒(アンモニア水)使用によって,純シリカ系ガラス粉末の合成を試み球状粒子を得るのに適した出発溶液(シリコンアルコキシド+アルコール+水)のモル配合比に検討を加えた.得られたシリカ系粒子は各種のレジン配合フィラーに有用と考えられる.FTIR分析の結果,焼成温度を1000℃以下の低温にした場合,水酸基が多くシラン処理剤による表面処理や生体活性などの新機能を付与できることが判明した.また,得られた粉末の光学的性質(屈折率と光透過率)を紫外-可視分光光時計によって調べた. (2)カルシウムとリンを配合したシリカ系ガラス粉末を調製し,その合成過程をDTA-TG熱分析,X線回折,FTIRによって検討した.900℃以上の加熱で,シリカガラス母相に結晶組成物(第三リン酸カルシウムなど)が混在し,生体材料として有用なことが判明した.焼成温度を1000℃以下の低温にした場合,(1)と同様に,水酸基が多くシラン処理剤による表面処理や生体活性などの新機能を付与できることが判明した. (3)アルミニウムとカルシウムを配合したシリカ系ガラスを調製し,その合成過程をDTA-TG熱分析,X線回折,FTIRに依って検討した.この系では,1000℃未満の加熱でガラス構造が維持されていた.ポリアクリル酸と反応させるとキレート結合を生じ,歯科用セメントとして有用なことが確認された.また,(1),(2)と同様に,水酸基が多くシラン処理剤による表面処理や生体活性などの新機能を付与できることが判明した.
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