研究概要 |
溶液から無機材料を合成する湿式のゾル-ゲル法応用によって,新機能を有するシリカ系ガラスセラミックス材料を調製し,歯科材料としての応用可能性について検討した. (1) 骨芽細胞様細胞MC3T3-E1をCO_2インキュベーターを用いて経代培養した.カルシウムとリンを配合したシリカ系ガラス粉末を培地に添加して培養したところ,焼成温度によって細胞数がかなり変化する事が判明した.焼成温度が1000℃の場合,細胞数が最大で,焼成温度の低下(400℃まで)に伴い細胞数が減少した.これは焼成温度が低いと,粉末より未反応の硝酸塩が分解しpHの低下を招来したためと考えられた.一方,カルシウムとリンを配合したシリカ系ガラス粉末を培地に添加しその上澄み液を培地に一部添加して培養したところ,細胞数は焼成温度にかかわらず上澄み液未添加の対照に比べ有意に増加した.カルシウムの溶出が寄与していると考えられた.従って,ゾル-ゲル法によって調製したカルシウムとリンを配合したシリカ系ガラス粉末は循環性生体環境では骨修復用生体活性インプラントとして有用と考えられた. (2) アルミニウムとカルシウムを配合したシリカ系ガラスはポリアクリル酸との反応性に富み,歯科用セメントとして有望な硬化時間と強度を有することが確認された. (3) ジルコニアを配合したシリカ系ガラス粉末は屈折率が大きいため光重合型コンポジットレジンのフィラーに有用で優れた光透過性を有することが確認された. (4) シリカ系ガラス粉末の圧粉体を高温(1200℃まで)まで焼成し,バルク体試料の調製にも成功した.
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