研究概要 |
溶液から無機系材料を合成する湿式のゾルーゲル法応用によって,新機能を有するシリカ系ガラスセニミックス材料を調製し,歯科材料としての応用可能性について検討を加え,今年度は以下の知見を得た. 1 チタンとジルコニアを配合したシリカ系焼成粉体は,高い光屈折率を有するため多官能性モノマーにフィラーとして配合すると光透過性に富んだ光硬化型コンポジットレジンが得られた.ジルコニアは,さらに歯質に近似するX線造影性をも付与した. 2 (800℃程度の)低温焼成を施したシリカ系粉体は水酸基を多く含むため,効果的なシラン処理が行なえ,コンポジットレジンの強度の増加が得られた. 3 アルミニウムとカルシウムを含むシリカ系焼成粉体は焼成温度の違い(400から1000℃まで)によって,ポリアクリル酸と異なる化学反応を示し,硬化時間,硬さ,調度も異なった.市販のグラスアイオノマーセメントを上回る物性は得られず,今後の継続研究が必要と考えられた. 4 カルシウムとリンを含むシリカ系低温(400℃)焼成粉体は多くの有機物側鎖を残した無機-有機複合体で生分解性を有すると考えられた,この粉末をアテロコラーゲンゲルと混ぜ,紫外線照射によってコラーゲンを架橋結合させ硬化体を得た.ガス滅菌後,ラット頭蓋骨骨膜下に埋入し,4週間後の生体反応に検討を加えた.(200μm以上の)大き目の硬化体は生体内細胞の分泌したコラーゲン性繊維質に被覆されていた.同時に,被覆された硬化体は生体内で分解する形態が観察された.(200μm以上の)小さ目の硬化体は生体による貧食作用が見られ白血球,リンパ球,マクロファージ等の細胞が周囲に多く見られた.硬化体の分解に伴い,カルシウムとリンが供給され,シリカは水酸基に富みアパタイトの核形成に有用と考えられるため,この硬化体は創傷治癒過程を経る骨再生に有用な材料になり得ると考えられた.
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