研究概要 |
本年度はイヌの顎骨を用いたFGF-2の骨形成促進作用を検討することに先立ち,動物種によるFGF-2に対する影響の違いを明らかにするため,イヌ成長軟骨細胞の初代培養系を確立し,FGF-2の影響を主としてウサギと比較し検討した。生後2週のイヌ肋軟骨骨端板より成長軟骨を切り出しコラゲナーゼ処理で細胞を得た後,96well組織培養プレートに1wellあたり5×10^4個で播種し,初代培養した.各種濃度のb-FGFを培地中に入れ,ALP(アルカリフォスファターゼ)活性,typeIIコラーゲンの産生や石灰化に対する影響を調べた.その結果,高細胞密度条件下において,β-glycerophosphate無添加かつアスコルビン酸存在下で軟骨細胞の石灰化を確認した。この系において,FGF-2を1.0ng/ml添加した場合,ALP活性は抑制された.また,軟骨細胞の増殖は促進され最終分化および石灰化は完全に抑制された。ペプシン消化後のSDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動による培養細胞層のコラーゲン分析を行なった結果,コントロールおよびFGF-2添加群において,培養2日目で分子量約120Kda付近にtypeIIコラーゲンのα1鎖と思われる単一バンドが見出された。このバンドは,培養6日目と10日目何れにも同様に確認された。以上のことから,初代培養したイヌ成長軟骨細胞の増殖,分化および石灰化にFGF-2投与が及ぼす影響が明らかとなり,これがウサギ成長軟骨細胞とほぼ同様な応答であったことから,FGF-2に対する細胞応答は動物種による差がほとんど見られないことが明らかとなった。従って,局所に徐放投与されたFGF-2が動物種に関わらずイヌにおいても骨の創傷治癒を促進することが示唆され,GBRにおける骨再生促進実験の妥当性が示された.
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