研究課題/領域番号 |
09671997
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
久恒 邦博 長崎大学, 歯学部, 教授 (20037526)
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研究分担者 |
羽坂 雅之 長崎大学, 工学部, 教授 (30039698)
有働 公一 長崎大学, 歯学部, 助手 (60145266)
田中 康弘 長崎大学, 歯学部, 助手 (10217086)
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キーワード | 金合金 / 相変態 / 規則格子 / X線回折 / 電子顕微鏡 / 時効硬化 |
研究概要 |
本研究は生体環境温度(37°C)で自然時効硬化する新しい歯科用合金を開発するための基礎的データを得ることを目的として遂行されたものである。等原子比合金CuAuは高温からの焼入れ後、比較的低温でCuAuI型規則格子が生成する。しかし、CuAuII型規則格子はほとんど利用されていない。平成9年度においてはCuAuII型規則格子を安定化させるといわれているInを等原子比合金CuAuに添加した合金を溶製し、CuAuII規則化に伴なう時効硬化挙動を、電気抵抗測定、硬さ試験、X線回折、走査型ならびに透過型電子顕微鏡観察により検討した。主な結果は以下の通りである。 1.Inの添加はCuAuIおよびCuAuII型相の変態温度の降下をもたらした。6at%Inの添加では約120°Cも低下した。 2.Inの添加は相変態速度を小さくする傾向を示した。 3.等温焼鈍における相変態は初期段階でCuAuI型が形成され、CuAuII型相との共存状態を経由して、CuAuII型相の単独相へと進行した。すなわち、CuAuII型相の安定化傾向が確認されたものと思われる。 4.200°Cおよび250°Cの時効処理では短時間で急激に顕著な硬化を示し、ゆるやかな過時効軟化を呈した。その硬化挙動にはIn添加の影響があまり認められなかった。 5.結晶学的にはIn添加と共に面心正方晶の軸比が増加し、長周期規則相のドメインサイズが減少する傾向が認められた。この挙動はIn添加による合金の価電子濃度の減少に関連するものと思われる。 平成10年度においては生体環境温度近辺での焼鈍実験を行ない、CuAuII型規則格子が如何に時効硬化に寄与するかを明らかにすると共に、微細組織の制御を模索し、自然時効現象を利用した歯科用合金の可能性を探るための基礎的データを収集するつもりである。
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