研究課題/領域番号 |
09671998
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研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
藤井 孝一 鹿児島大学, 歯学部, 助教授 (60156817)
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研究分担者 |
塚田 岳司 鹿児島大学, 歯学部附属病院, 助手 (70236850)
井上 勝一郎 鹿児島大学, 歯学部, 教授 (30047790)
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キーワード | 軟性裏装材 / 粘弾性 / 表面粗さ / 義歯洗浄剤 / 反射率 / 接触角 / 重量変化 / デュロメータ硬さ |
研究概要 |
比較的長期にわたって使用可能なアクリル系軟性裏装材として、粉末部分にポリエチルメタクリレート(PEMA)を主成分とし、液部分には可塑剤としてジブチルフタレート(DBP)を用い、光重合型にするためにこれにエチルメタクリレート(EMA)、光増感剤(カンファキノン)、還元剤(ジメチルアミノ安息香酸エチル)を加え、さらにエタノール(Et)を添加した9種類の光重合型軟性裏装材(粉/液比=1.38)を試作した。これらの材料について予備実験を行い、比較的市販品に近い硬さを示す材料(液組成;EMA:DBP=l:8)を選択し、さらに、Et濃度が気泡の発生に影響を及ぼすことが考えられたので、この組成比でEt濃度(0〜14.3wt%)を変化させた4種類の試作材料(MID8E0、M1D8E0.5、M1D8E1.M1D8E1.5)を本実験に用いた。実験は37℃の3種類の浸漬液(蒸留水、市販生理食塩水、人工唾液)中に8週間保存し、その期間中に義歯洗浄剤でメーカー指示に従い洗浄したものについて、粘弾性的性質、および耐久性の評価を行うこととした。しかしながら、現在、粘弾性的性質の変化については測定を継続中であり、その結果を全てまとめることはできないが、現在までに得られた結果を以下に示す。 1) 3種類の浸漬液に保存したのみの各試作材料の重量変化(wt%)は、浸漬期間の増加に伴い10〜14日後までは全ての浸漬条件のもので大きくなり、Et濃度の低いものほど大きな値を示す。 2) 3種類の浸漬液に保存したのみの各試作材料のデュロメータ硬さ(HDA)は、浸漬期間の増加に伴い浸漬5〜7日後までは全ての浸漬条件のもので大きくなり、Et濃度の高いものほど大きな値を示す。 3) 3種類の浸漬液に保存したのみの各試作材料の硬さ(kgf/cm^2)、緩和弾性率{Er(0)}(MPa)は、全ての測定条件の材料で浸漬期間(4週間まで)の増加とともに増加する。それらの値はEt濃度の高いものほど大きな値を示す。 4) 浸漬液に保存し、洗浄した各試作材料のうち、Et濃度の低いもの(M1D8E0、M1D8E0.5)の反射率は、浸漬期間の増加に伴い増加する傾向を示す。とくにこの傾向は生理食塩水中に浸漬したもので顕著に認めらる。 5) 浸漬液に保存し、洗浄した各試作材料のうち、Et濃度の高いもの(M1D8E1、1D8E1.5)の接触角は、浸漬3日後まで浸漬期間に僅かに増加する傾向を示す。とくにこの傾向は蒸留水中、および人工唾液中に浸漬したものについて顕著に認められる。これに対して、Et濃度の低いものでは有意な変化は認められない。 6) 浸漬前の各試作材料の表面粗さは、Et濃度の増加によって大きくなる傾向を示す(約5〜10μm)。8週間浸漬し洗浄した各試作材料では、全ての条件のもので粗さ値を増加させる傾向が認められる。 7) 3種類の浸漬液に保存し、洗浄した各試作材料では、浸漬期間の増加に伴いEt濃度の高いものの試料表面に大きな孔が見られる。これは市販材料でも同様に見られたが、孔の形成にEt濃度が大きく寄与するものと思われる。
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