研究課題
基盤研究(C)
象牙質に対する修復用レジンの接着技法は、象牙質表層の無機質を酸類で除去し、コラーゲン線維を露呈させ、そこに接着性レジンを浸透させて数ミクロンのいわゆる樹脂含侵層を形成させるものである。しかし、接着性レジンは本来歯質ミネラルと強く接着する能力を有している。そこで、本研究は象牙質表面の有機質をコラゲナーゼ、ペプシターゼなどで選択溶解させ、無機質に富む被着面を形成させる可能性を調べたものである。まず、歯質表層の分析手法を確立するために、健全な象牙質表面をレーザー・ラマンを用いて分析した。歯質アパタイトのりん酸根の960cm^<-1>の散乱ピークとコラーゲン由来の蛋白アミドI振動(1660cm^<-1>)、メチレンによる強い散乱(2930cm^<-1>、1450cm^<-1>)を認めた。メチレンの散乱はいずれもブロードなピークであり、コラーゲンと無機質の強い結合状態を反映していた。象牙質面を30%りん酸で2分間または20%クエン酸で1分間処理すると、無機質が選択的に溶解されることがアパタイトとメチレンの強度比の変化から明らかになった。また、この酸処理ではコラーゲンの変性は少なかった。有機質溶解法として、10%次亜塩素酸ナトリウム処理およびコラゲナーゼとトリプシンの混合液で処理を行うと、表層有機成分の減少が認められた。空間分解能を上げて測定した結果、表層下にはなおコラーゲンが残存していた。無機質と強く結合した有機質の溶解をさらに促進するために、りん酸処理とコラゲナーゼ処理の併用と次亜塩素酸処理とコラゲナーゼ処理の併用を行った結果、前者よりも後者の方が効果的であった。ただし、象牙質表面の処理効果は、エナメル/象牙境部分や髄腔部分など部位によって異なることが判明した。
すべて 1998 1997
すべて 雑誌論文 (7件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (3件)
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