研究概要 |
金属と接着性モノマーは、モノマーの極性基と下地金属表面の相互作用によって接着し、接着界面の接着力と耐水性は、モノマーと下地金属の酸`塩基性によって決まる。現在、接着牲モノマーとして、4-META,4-AET,MAC-10,MDP,VBATDT,M10PSなどが用いられている。しかし、接着力と耐水性におよぼすモノマーと下地金属の酸・塩基性の効果についてはほとんど解明されていない。これらを明らかにするためには、異なる金属表面への種々の接着性モノマーの吸着・脱離挙動を調べる必要がある。微小質量変化を検出できる方法として、水晶振動微量天秤法(Quartz crystal Micro-balance,QCM)がある。この方法では、水晶振動子の共振周波数変化からナノグラムオーダーの質量変化を測定できる。本実験では、QCMを用いて、下地金属の種類を変え、接着性モノマーの吸着・脱離挙動を調べた。 水晶振動子に金属を蒸着し、MMA中における接着性モノマーの吸着・脱離挙動をQCMで調べた。大気中でMMAを注入した場合、MMAの吸着と溶液によるすべり振動の抵抗により共振周波数が減衰した。Snを蒸着した振動子に4-METAを5%含むMMA溶液を添加した場合、共振周波数が増加し、蒸着したSnがMMA溶液中に溶出していることを示した。この事実を実験的に確かめるために、Snを蒸着した2枚のガラス板をそれぞれ、MMAのみと4-METAを5%含むMMA溶液に浸漬した。4-METAを5%含むMMA溶液に浸漬した場合では蒸着Snが失われ、透明になった。4-METAのキレート効果によりSnがMMA溶液中に溶出したものと考えられた。
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