研究概要 |
本研究の目的は,根面齲蝕や歯頸部齲蝕などの治療処置に対して、従来のリン酸水溶液などの酸処理を施さなくても、象牙質の無機質成分を脱灰させないで象牙細管がスミヤ-キャツピングしたまま管周象牙質にも接着する象牙質接着システムを開発するとともにそれらの接着メカニズムを解明することである。 そこで、本年度は、昨年度に試作した66種類のデンチンプライマ一:33種のAプライマー(2-ヒドロキシエチルメタクリレート60重量部・蒸留水40重量部からなる水溶液に15種類の芳香族アミンと18種類の脂肪族アミンをそれぞれ0.5mol%添加したプライマー)および33種のBプライマー(33種のAプライマーに合成したカルボン酸基を有するモノマー10重量部をそれぞれ添加したプライマー)を用いて、抜去牛歯象牙質に対する剪断接着強さ試験を行った。すなわち、各プライマーを象牙質面にそれぞれ30秒間処理し、15秒間エアー乾燥した後、試作した1液性ボンディング材(フッ素除放性フィラーを5wt%含有したボンディング材)それぞれ塗布し、30秒間光照射を行い、次いで可視光線重合型コンポジットレジンを充填し、試験体を作製し、24時間後に試験を行った。 その結果、剪断接着強さが33種のAプライマーでは10.5〜13.4Mpaの範囲であったのに対して33種のBプライマーでは15.2〜20.8Mpaの範囲となった。カルボン酸基を有するモノマーを添加させたプライマーの方がモノマーを添加しなかったプライマーより象牙質接着に有効であることが分かった。 また、高い剪断接着強さを示したBプライマーのSEM観察では象牙質・レジン接着界面付近にlμm以下の樹脂含浸層が生成され、象牙細管にレジンタグの形成が認められた。しかも、レジンが管間象牙質および管周象牙質に密着して接着している像が観察された。
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