象牙質接着における試作デンチンプライマー成分の各種アミノ酸誘導体の効果とボンディング材中に添加したフッ素徐放性フィラーの効果およびその接着メカニズムを明らかにする目的で、2種の合成した4-メタクリロキシヘキルトルメリット酸無水物(4-MHTA)と4-メタクリロキシデシルトリメリット酸無水物(4-MDTA)を用いて、デンチンプライマーと4-MHTA含有ボンディング材および4-MDTA含有ボンディング材の接着システムに対する剪断接着強さ試験を行い、比較検討を行った結果、次のような結論を得た。 1.60wt%HEMA水溶液に脂肪族系アミノ酸(18種)と芳香族系アミノ酸(15種)をそれぞれ0.5mol%を添加したAプライマーとAプライマーとに4-MHTAモノマーあるいは4-MDTA5wt%含有ボンディング材をそれぞれ塗布し、光重合型コンポジットレジンを充填した場合の剪断接着強さでは、Bプライマーの方が同一アミノ酸の系でAプライマーより高い接着性を示し、その値は約1.5倍以上であった。また、BプライマーよりCプライマーの方が同一アミノ酸の系で約1.1倍以上高い値を示した。 2.Cプライマーの接着システムでは、接着強さが20MPa前後と高い値を示したアミノ酸は、脂肪族系で8種、芳香族系で5種あった。 3.合成した2種の4-MHTAとでは、メチレン鎖が長い4-MDTAの方が接着強さは大きくなる傾向であった。 4.試作ボンディング材中に5wt%フッ素徐放性フィラーを添加しても接着強さは、低下しなかった。 5.接着強さが高い象牙質接着システムの接着メカニズムは、4-MDTAの(COO^-)_2が水中でリガンドモノマーとして象牙質中のハイドロキシアパタイトのCa^<2a>とキレート結合を形成するとともにコラーゲンのアミノ基と分子間水素結合を形成するものと考えられる。
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