本研究の目的は、接着のために機能性モノマーにより表面改質された表面の表面自由エネルギーや機能性モノマー分子の溶解性パラメーターと接着強さとの関係を、ならびにアパタイトカラムを用いた接着機能性モノマーのアフィニテイークロマトグラフィーにより歯質とモノマーとの相互作用を分子論的ならびに熱力学的に解析することであり、次の結果を得た。(1)セラミックスの接着プライマーであるシランカップリング剤に親水性の3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシランと疎水性のポリフルオロアルキルトリエトキシシランとを混合し用いると、一定の混合割合において、高い接着強さと耐水耐久性を示した。(2)その接着強さとそれら処理表面の表面自由エネルギーとの間には相関性があった。(3)混合シランならびに接着剤のメタクリル酸系レジンの溶解性パラメーターの値では、処理層分子と接着剤の溶解性パラメーターの数値が近いものほど、高い処理効果を示した。しかしながら、溶解性パラメーターだけが要因ではなかった。(4)HPLCにより得られた各種機能性モノマーの保持時間とそれらモノマーの溶解性バラメーターとの間には、直線的関係が認められ、溶解性パラメーターは分子の極性を表す指標として有効であった。(5)Feイオン処理した牛象牙質をカラムとしたアフィニティークロマトグラフィーでは、各種機能性モノマーのクロマトグラムは、未処理カラムに比べ、保持時間が長く、ブロードなピークを与えた。(6)各種機能性モノマーおよびリン酸基を多数もつ化合物を電位差滴定し、それら化合物とカルシウムイオンの相互作用を検討した。4-メタクリロイロキシエチルトリメリット酸、ポリリン酸、そして、ニトロトリス(メチレンホスホニック酸)がカルシウムイオンと強い相互作用を示すことが分かった。
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