研究概要 |
義歯表面の観察への原子間力顕微鏡(Atomic Force Microscope,AFM)の応用1. 目的 義歯表面へのペリクルや歯石様沈着物の付着は,義歯床の表面形状や材料の物理化学的性質により影響されると考えられる.最近実用化されてきた原子間力顕微鏡は,微細な表面形状をナノ単位で観察でき,しかもその凹凸をコンピューター処理により3次元的に観察できる.そこで義歯表面の観察に原子間力顕微鏡を用いて,その有効性について検討を行った. 2. 材料と方法 (1) 試験片の作製 義歯床用アクリリックレジン(アクロン,ジーシー社)をメーカー指示の粉液化で混和し,重合を行い日常臨床で行われている義歯の研磨法により表面仕上げを行った.その後試験片を37℃の蒸留水中に20日間浸漬し,吸水飽和させて観察試料とした. (2) 試験片の観察 試験片の観察は,カンチレバー圧力を1V,走査速度を1ヘルツ,Zレンジを1μmにセットし,観察エリアは,10×10μm,20×20μmについて行った.得られた原子間力顕微鏡像は,傾き補正とノイズ除去後,凹凸に応じたカラー表示と3次元表示による観察を行った.また,任意の部位における断面形状の観察と凹凸の計測も行った. 3. 結果および考察 原子間力顕微鏡は,試料を大気中あるいは溶液中で観察することができ,しかも試料表面の凹凸の深さを正確に測定することができる.本実験により従来では不可能であったレジン表面の凹凸像の観察が,原子間力顕微鏡を用いることにより簡単に,しかも正確に行うことができ,義歯表面の形態とペリクルの付着や歯石様沈着物の付着の関係を研究するのに極めて有効な装置であることが示された.
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