平成9年度では、顎関節に機能異常が認められない者10名を被験者として、咬頭嵌合位、スキューバダイビング用マウスピース装着時の挙上位および咬みしめ時、これら3顎位による多層断層撮影とMRI撮像から、関節窩内における顆頭の変位を調べた。多層断層撮影とMRI撮像の所見では、関節窩内における顆頭の挙動は一定でなく、多様化を示した。 平成10年度では、この中から6名を被験者として、既製のマウスガードと新たに開発したH型構造のカスタムメイド・マウスガードを用いて、咬みしめ時における下顎の変位について比較、検討した。咬みしめ時における下顎運動の記録はMMJ-1を用い、被験者には10秒間の最大咬みしめと、3回の連続咬みしめを行わせた。その結果、既製のマウスガードは、最大咬みしめ時に安定した下顎位が得られず、連続咬みしめでは閉口経路が多様化する傾向があることが分かった。さらに、既製のマウスガードにおいては、材質の柔らかいものほど、この傾向は顕著であった。これに対して、H型構造のカスタムメイド・マウスガードは最大咬みしめ時に安定した下顎位が得られ、かつ閉口経路も収束していた。以上のことから、H型構造のカスタムメイド・マウスガードは下顎および顆頭の位置を安定させ、有用であることがわかった。
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