本年度はまず粗精製のBMPを実験に必要な量まで大量生産した。すなわち、牛皮質骨約500本から抽出を行ない、その後部分精製を行なった。得られたBMPの量は4500mgである。さらに、遺伝子組換による人工合成BMPの作成を試みた。部分精製した天然抽出のBMPは非水溶性であるので、これに対する高分子キャリアーをスクリーニングした。この結果、ゼラチン、でんぷん等の比較的吸収特性が速いキャリアーが有効であることが判明した。一方実際の臨床応用に際してはさらに精製度の高いBMPを使用される可能性が高くこれらの、BMPの多くは水溶性であることから、部分精製BMPを水溶性に調整し、高分子との結合実験を同様に行なった。その結果非水溶性のBMPと比較して吸収特性の緩やかなキチンなどのキャリアーが有効であることが判明した。芯材のチタン表面の処理は陽極酸化を行ない高分子キャリアーにはゼラチンを使用して移植実験を行なった。移植された複合試料すべてに良好に新生骨の誘導が確認され、使用するBMPの決定と最適の組み合わせの高分子の使用によりさらに新生骨の誘導は安定するものと考えられる。本年度は人工合成のBMPの生産はバッチごとに安定せず、来年度への検討事項となった。しかし、水溶性BMPの結果は人工合成BMPのキャリアー選択において直接応用できるものと推定されるため、次年度人工合成BMPの生産が安定した時点で今年度の結果に基づき速やかに高分子キャリアーを使用する予定である。また、実験開始時点では芯材表面の処理、すなわち、キャリアーあるいはBMPとの親和性が重要であるとの予測をたてていたが、ハイドロキシアパタイトなどの特異的なBMP親和性を有する材料の場合においてもその化学的結合力よりもむしろ、キャリアーを使用する効果が勝っていることが今年度の実験から判明した。
|