研究概要 |
実験1. 臓器中の総水銀および有機水銀の定量 10週令のラット20匹を実験群,10匹を無処置の対照群として用いた.実験群には上顎臼歯4本に高銅型アマルガムを充填した.6ヶ月経過後に還流屠殺し,脳,肝臓,腎臓の総水銀,有機水銀を測定した.対照群の総水銀量は,脳:4.0±0.4ng/g,肝臓:18.9±2.4ng/g,腎臓:209.6±40.2ng/g,有機水銀量は,脳:4.6±0.5ng/g,肝臓:11.0±1.9ng/g,腎臓:48.7±2.2ng/gであった.実験群の場合,各臓器の総水銀量は対照群よりも多く,脳:5.6±1.lng/g,肝臓:29.9±9.4ng/g,腎臓:2706.5±1253.1ng/gであり,腎臓に多く認められた.有機水銀量は,脳:3.9±l.0ng/g,肝臓:9.1±4.5ng/g,腎臓:24.8±4.3ng/gであった.有機水銀の分析が不慣れなために,得られた結果の信憑性は低く,アマルガム中の水銀の有機化の可能性の有無を判断することは不可能であった. 実験2. アマルガムに存在する水銀の中枢神経系に及ぼす影響について. 10週令のラットの上顎臼歯4本に高銅型アマルガムを充填し,ロータロードに乗せ脱落するまでの時間について検討したが,実験群間でバラツキが大きく,実験が成立しなかった.この原因として10週令のラットでは既に学習能力を備えているために,学習能力の未熟なより若いラットで検討することが必要であることが判明した. 実験3. 写真エマルジョン法による水銀顆粒の観察 10週令のラットの上顎臼歯4本に高銅型アマルガムを充填した.6ヶ月経過後に還流屠殺し,水銀顆粒の観察を脳,肝臓および腎臓について行った.水銀顆粒は脳では認められず,肝臓ではその存在は明確ではなかった.それに反して,腎臓では近位尿細管の細胞内に水銀顆粒が認められた.1年経過後についても同様の実験を行ったが,4本のアマルガムが残存したのは20匹中1匹であり,実験が成立しなかった.
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