研究概要 |
3種類の鋳造用合金について,合金中の微量成分含有量を化学分析によって調べた結果,割れ発生が最も大きかった合金は,ケイ素,炭素およびリンを多く含むことが判明した. X線回折によると,鋳造用合金の母材は最密六方晶構造であったが,溶接部は面心立方晶構造であることが判明した.一方,加工用合金の場合は,母材および溶接部ともに面心立方晶構造であった. 鋳造用合金の溶接部の破面上に存在する介在物をEPMAによって分析した結果,介在物にはケイ素の酸化物が多く認められた.また,アルミやクロムの酸化物やカルシウムの硫化物も認められた. 以上から,レーザ溶接部に発生する割れの原因として,炭素,ケイ素および硫黄の存在が考えられた.炭素が有されていない合金のレーザ溶接性を検討したところ,割れの発生は抑制されることが判明した.しかし,インゴット表面のアルミ酸化物が溶接部に溶け込むと割れが発生することが判明した. 溶接部の割れを溶接部を重ねることによって防止できるかどうかを検討したところ,オーバーラップ率が50%では割れは消失しなかったが,75%では割れはほとんど消失した.したがって,割れ発生が少ない合金では溶接部を重ねることによって割れを抑制できることが判明した. 溶接欠陥の発生にパルス波形が与える影響を検討した結果,波形の立ち上がりに傾斜を与え終末部をなだらかにすることによって,溶接欠陥の発生が抑制できることが判明した. 鋳造用コバルトクロム合金と加工用コバルトクロム合金の異種合金溶接を試みたところ,鋳造用合金の同種の溶接では割れ発生が大きかった合金も割れの発生が抑制されることが判明した.
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