研究概要 |
口腔内に浸潤麻酔を行なう疼痛実験モデルにより,インフォームドコンセント(負荷する刺激の情報を明らかにすること)によるストレス緩和の効果を検討するために,心理テスト,循環動態および血中カテコールアミンの観察を行なった. 方法:被験者は大阪歯科大学学生および講座員28名とした.これらをインフォームドコンセントにより実験内容を明らかにし刺激を予期できる状態にした群(以下I.C.群)14名と,実験直前まで何も説明しない群(以下n-I.C.群)14名の2群に分けた.浸潤麻酔時のストレス反応の測定は,患者監視装置を用い循環動態の測定を,レーザー組織血流計を用いて指尖部血液量の測定を行なった.また肘静脈から採血を行ない血中カテコールアミンの測定を行なった. 結果:STAIによる不安の測定の結果,I.C.群では平常安静時と実験前の比較で状態不安は変化しなかったのに対し,n-I.C.群では実験前に状態不安が有意な上昇を示した.循環動態の測定の結果,血圧は浸潤麻酔により両群とも有意な上昇を示し,I.C.群よりもn-I.C.群のほうが上昇率が高くなる傾向が見られた.指尖部末梢血流量はn-I.C.群で浸潤麻酔時に有意な減少を示した.血中カテコールアミンの変動には両群とも有意な変化は見られなかった.以上よりインフォームドコンセントを行なわなかった被験群では刺激の情報が不足することにより浸潤麻酔時の疼痛刺激に加え,不安や恐怖などの情動変化による交感神経活動が著明になることが示唆された.
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