研究概要 |
骨膜の骨形成細胞のうち骨芽細胞の表現形質を備えている骨膜内層の骨芽細胞様細胞に注目し、その増殖能、表現形質の発現が放射線照射によってどのような影響を受けるのかをラット胎児の頭蓋骨から採取した骨芽細胞様細胞を用いて検討し下記の結果を得た。 1)非照射群では経日的に細胞数が増加したが、照射群では照射線量が5Gy,10Gy,15Gyと増加するにつれ、細胞増殖は線量依存的に有意に抑制された。また5Gy群、10Gy群では経日的に回復傾向が認められたが、15Gy群では照射後14日経っても回復傾向は認められなかった 2)一方、アルカリフォスファターゼ活性、PTH依存性cAMP産生量は照射後14日目までの期間、照射群と非照射群との間に有意差は認められなかった。 以上の結果から放射線照射によって骨膜の骨芽細胞様細胞の増殖能は線量依存的に抑制されるが、ある線量以下では経日的に回復すること、また表現形質の発現は照射の影響を受けにくいことが示唆された。ただし本実験ではアスコルビン酸を除去した培地(10%FBSを含んだα-MEM培地)で培養しているため、骨芽細胞様細胞の長期培養に伴うALPの上昇および石灰化機能の獲得は非照射群においても観察されないと予想される。すなわち今回の結果は細胞は増殖できるが分化できない条件下での結果であって、照射前に保持していた表現形質は照射によって影響されにくいとしかいえない。現在、骨芽細胞様細胞の長期培養に伴うALPの上昇および石灰化機能の獲得が観察される条件(アスコルビン酸存在下での培養)下での骨芽細胞様細胞の表現形質の発現が放射線照射によってどのような影響を受けるのかを検討中である。
|