研究概要 |
口腔癌の橙色の紫外線蛍光を発する組織を採取し、酢酸エチル-氷酢酸溶液にて蛍光物質の抽出を行い、その抽出液を蛍光検出器にて分析した。その結果、抽出液には404nmの励起波長により633または634nmにピークを有する蛍光を発する物質が含有していることが確認された。同様に採取した歯垢や舌背の組織抽出液中にも、630nm付近に蛍光波長のピークが認められたが、その蛍光強度は口腔癌と比較すると非常に小さい状態であった。癌組織の蛍光物質抽出液を高速液体クロマトグラフ(カラム:Shodex ODS pak F-511A)にて分離したところ、種々の溶出位置に蛍光のピークが認められた。そのうち蛍光強度の高いピーク3分画を採取して蛍光検出器にて確認したところ、その蛍光波長は630,631および632nmであった。また、プロトポルフィリンIX、コプロポルフィリン、ウロポルフィリンを口腔癌の蛍光物質抽出液と同一条件で高速液体クロマトグラフにて分析したところ、プロトポルフィリンIXの溶出位置は口腔癌抽出物の蛍光強度が最も高いピークと一致していた。これらの結果から、口腔癌の蛍光物質中には、プロトポルフィリンIXが大量に含まれている可能性が示唆され、症例を重ねて結果の確認と他の蛍光物質の同定についても検討中である。ハムスターの実験的誘発舌癌は、現在発癌操作の途中であり、過角化状態の組織サンプルは採取し凍結保存している。今後、初期癌および進行癌の状態の時期に組織サンプルを採取し、組織抽出物中に含まれる蛍光物質をヒト口腔癌の分析システムにて検討する予定である。
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