口腔癌特有な赤色の紫外線励起蛍光の発光機序を解明する目的で、ポルフィリン関連物質に焦点を絞って、ヒト口腔癌由来株化培養細胞、ハムスター実験的誘発舌癌および口腔癌患者臨床材料について生化学的に検討し、以下の結果を得た。 1)ヒト口腔癌株化培養細胞(HSC2、HSC3、HSC4)は、ポルフィリン前駆物質であるアミノレブリン酸投与下の培養により、培養液中にZnプロトポルフィリン、コプロポルフィリン、プロトポルフィリンIXと蛍光のピーク波長が類似する物質を産生し、その蛍光強度はアミノレブリン酸濃度依存的に増加した。また、HSC2および3により形成されたヌ一ドマウス腫瘍組織抽出液中にプロトポルフィリンIX類似の蛍光物質の存在が示された。 2)ハムスター実験的誘発舌癌では、プロトポルフィリンIX類似の蛍光物質が癌化の過程で組織含有量が増加する傾向を示し、癌組織では明瞭な蛍光ピークを呈していた。 3)ヒト口腔癌の表層組織の高速液体クロマトグラムによる分析では、癌の蛍光組織は、プロトポルフィリンおよびその関連化合物型、コプロポルフィリンおよびその関連化合物型およびその他の3群に分類されることが示唆された。 以上の結果から、口腔癌の特有な紫外線励起蛍光には、プロトポルフィリンIXが関与し、癌組織がその蛍光物質を産生し得ることが示唆された。
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