研究概要 |
我々は、ヌードマウスに対する造腫瘍性を有する口腔偏平上皮癌細胞株HSC-3細胞に微小核細胞融合法を用いてヒト正常第3染色体を移入し、既に得たクローンも含め16個の細胞クローンを単離した。それらすべての細胞クローンについてQバンド分染法による染色体解析を行った結果、既に論文(Oncogene11:1197-2004,1995)で用いた1つのクローンのみが完全な状態でヒト第3染色体が移入されていることが解った。従って、他の15クローンは部分的に第3染色体が移入されていることになる。そこで、すべての細胞クローンよりDNAを抽出し,第3染色体短腕上に位置しているDNA多型性マーカーを用いたサザンブロット法、さらに、マイクロサテライトマーカーを用いたPCR法により移入された第3染色体短腕の領域を決定した。その結果、3クローンは第3染色体短腕の大部分が移入されていることが確認できたが、他の12クローンはごく一部しか移入されていないことが解った。さらに、それら16クローンのヌードマウスに対する造腫瘍性について調べたところ、一部しか移入されていないクローンのうち4クローンは親株とほぼ同様な造腫瘍能を有していたが、他の12クローンでは著しく造腫瘍能が抑制されていた。現在、造腫瘍能と移入された第3染色体短腕領域の相関性につい検討中である。また、既に第3染色体短腕上より単離された癌抑制遺伝子候補の一つであるFHIT遺伝子について検討した。口腔癌由来の15細胞株を対象にRNAレベルの発現異常をRT-PCR法を用いて解析した結果、12細胞株(80%)において正常な発現が確認されたが、残りの3細胞株(20%)では発現が認められなかった。今後、臨床検体を対象とした解析を行い、FHIT遺伝子の異常が口腔癌発生・進展に関与しているか否か明らかにしてゆく予定である。
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