1) 我々は、マウス造腫瘍性口腔扁平上皮癌細胞株HSC-3細胞に微小核細胞融合法を用いヒト正常第3染色体を移入し、16個の細胞クローンを単離した。それらの細胞クローンについて造腫瘍能と第3染色体短腕領域の相関性について検討した。その結果、3p25あるいは3p21.2-p21.3のいずれか一方の領域が移入されることにより、造腫瘍能が著しく抑制されることがわかった。したがって、これら2領域に口腔扁平上皮癌の発生や進展に関わる癌抑制遺伝子が存在することが強く示唆された。 2) 20例の口腔扁平上皮癌組織を対象に3p25-pterの5領域のLOH解析を行った結果、20例中10例(50%)に少なくともl領域のLOHが認められ、この領域上の遺伝子が本腫瘍の発生や進展に関与していることが示唆された。 3) 既に第3染色体短腕上より単離された癌抑制遺伝子候補の一つであるFHIT遺伝子について検討した。口腔癌由来の細胞株については3/15(20%)において異常を認めたが、口腔癌原発巣組織を対象にRNAレベルの発現をRT-PCR法を用いて解析した結果、すべでの検体において正常な発現が確認された。これは、正常組織の混入のためなのか、これらの癌細胞では異常なかったのか不明のため、更なる検討が必要である。 4) 口腔扁平上皮癌由来の14種の細胞株を対象に第3染色体短腕上におけるホモ欠失領域について調査した。その結果、2種の細胞株において、FHIT遺伝子が位置している3pl4.2領域がホモに欠失していることがわかった。現在、今回認められたホモ欠失がFHIT遺伝子の異常に関与しているか検討中である。
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