| 研究概要 |
口腔領域は周囲を骨に囲まれているという解剖学的特徴を持つことから悪性腫瘍の顎骨への浸潤・骨破壊はしばしば認められ,顎骨浸潤の予防あるいは浸潤した癌細胞の顎骨での増殖を制御することは臨床上極めて重要である.本研究では,骨内に浸潤増殖した腫瘍に対するTNP-470の有用性を検討するためTNP-470の破骨細胞性骨吸収の抑制機序の解析を行った.
1.in vitroにおけるTNP-470の骨吸収抑制機序の解析
C57マウス骨髄細胞培養系を用いTNP-470の破骨細胞形成に及ぼす影響を検討した.骨髄細胞を1a25D3存在下で培養し破骨細胞様細胞を誘導した.これにTNP-470を添加すると,血管新生阻害作用を示す10-3ng/ml以上で著明に破骨細胞様細胞の形成を抑制した.一方,MC3T3-G2/PA6と脾細胞を1a25D3存在下で培養した破骨細胞形成系ではTNP-470は影響を与えなかった.骨髄細胞には血管内皮細胞が含まれており,TNP-470の血管新生阻害作用を介した破骨細胞形成抑制作用が示唆された.
2.in vivoにおけるTNP-470の骨吸収抑制効果の評価
骨吸収刺激因子IL-1をマウスの頭蓋冠周囲に注射し骨吸収を誘発し,TNP-470の影響を組織学的に検討した。IL-1単独処理群では,多数の破骨細胞が骨髄内腔に認められ活発な破骨細胞性骨吸収と髄膜側に反応性骨形成を認め,骨代謝回転が促進した.一方,IL-1処理群にTNP-470を投与すると破骨細胞は消失しその骨吸収は著明に抑制された.
以上の結果より,TNP-470には破骨細胞の形成抑制による骨吸収抑制作用があることが明らかになった.現在,破骨細胞性骨吸収の抑制機序の解析をさらに検討中である.
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