昨年度の検索にてEBベクターにHSV-tkを組み込んだプラスミド(pEB3-CAG-HSV-tk)は唾液腺癌細胞(HSGとTYS)を標的とした電気穿孔法あるいはリポゾーム法によるin vitroでのトランスフェクションでともに高い導入効率が認められた。しかしながら、pEB3-CAG-HSV-tkはヌードマウスに形成した腫瘍への導入効率が上げられなかった。そこで、in vivoヌードマウス腫瘍に対する導入効率を検定するために、通常のプラスミドベクターにSV40のプロモーターでドライブされる蛍ルシフェラーゼ遺伝子をレポーターとして有するプラスミド(pGL3-control)を用いた。HSG細胞をヌードマウスに移植し約5mmの腫瘍を形成させ、その腫瘍内部にpGL3-control(5μg、50μg)を50μlの培養液に溶解し注入した。皮膚の上から、あるいは皮膚に切開を加え腫瘍を露出させた条件でエレクトリックセルジェネレーターのピンセト電極で腫瘍をはさみ、スクエアーパルス1KV、99μsec、8回高周波パルスを負荷した。2日後に腫瘍を摘出し細胞抽出液のルシフェラーゼ活性を測定した。その結果、プラスミド5μgを用い、経皮的にパルスを負荷した場合に最も導入効率が高いことが明らかとなった。さらに、ヌードマウスに腫瘍細胞内での導入遺伝子の発現と局在を明らかにするためにレポーターとしてCMVプロモーターでドライブされる蛍光蛋白質GFP遺伝子を有するプラスミド(pEGFP-C3)をヌードマウス腫瘍に導入した。2日後に腫瘍を摘出し凍結切片を作製し蛍光顕微鏡にてGFPの発現を確認すると、数パーセントの細胞にGFP蛍光が認められた。以上のようにプラスミドベクターを電気穿孔法により腫瘍細胞に導入し得る事が明らかとなった。
|