歯原性嚢胞の詳細な嚢胞化機序や発育増大機序を解明する事を目的に本研究を行い下記の結果を得た。 1)歯原性嚢胞の嚢胞腔内圧は平均約60mmHgを示し、歯根嚢胞でやや高値を示した。しかしながら、嚢胞腔の大きさ、感染の有無には依存しなかった。 2)歯原性角化嚢胞の嚢胞内容液中には含歯性嚢胞や歯根嚢胞と比較して、高濃度のIL-1αが認められた。 3)歯原性角化嚢胞嚢胞上皮でのIL-1αおよびIL-1αmRNAの発現は、含歯性嚢胞や歯根嚢胞の嚢胞上皮と比較して発現増強が認められた。また、この発現は嚢胞開窓術によって低下した。 4)歯原性角化嚢胞の嚢胞内容液中には、他の嚢胞と比較して活性型MMP-9が高頻度に認められた。 5)歯原性角化嚢胞の嚢胞壁組織培養上清中にもproMMP-9、活性型MMP-9が認められたが、含歯性嚢胞、歯根嚢胞の嚢胞壁培養上清中には、活性型MMP-9は認められなかった。しかし、嚢胞壁培養液中にIL-1αを添加すると培養上清中へのMMP-9分泌の増加とともに、活性型MMP-9が認められた。 6)嚢胞由来上皮細胞はproMMP-9を産生し、フィブロネクチン存在下でIL-1αの濃度依存性にその分泌を増加した。 7)IL-1αによって嚢胞由来上皮細胞からMMP-3、u-PAの分泌増強も認められ、プラスミノーゲン添加によりproMMP-9の活性化が起こった。 8)嚢胞由来線維芽細胞はproMMP-2を産生し、I型コラーゲン存在下でIL-1αの濃度依存性にその分泌を増加した。 9)I型コラーゲンとlL-1αは嚢胞由来線維芽細胞のMT1-MMP発現を増強し、proMMP-2を活性化させた。今後は、嚢胞由来上皮細胞と嚢胞由来線維芽細胞との相互作用について検討する予定である。
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