研究概要 |
BCG菌は,菌株によって抗原物質の産生分泌量が異なり,抗腫瘍効果も異なっている.抗原性の高い蛋白質をリコンビナントBCGで効率よく発現させるために,BCG菌東京株で多量に発現・分泌する蛋白質MPB70(パスツール株ではほとんど発現しない)の調節因子・DNA結合蛋白質について検討を行った. MPB70遺伝子の上流域の塩基配列を基に,PCRでDNAプローブを作製した.これを,BCG菌の細胞破砕液をSDS-Pageで展開しブロッティングしたものと反応させることで,数種類のDNA結合蛋白質を確認した.このうち2つの蛋白質は,BCG菌東京株とパスツール株で発現量が異なり,MPB70の大量発現の因子の可能性が示唆された.これらの蛋白質を磁気ビーズを使用し精製を行っている.このうち1つは精製し,アミノ酸シークエンスを行った.今後,発現ベクターに組み込み,大腸菌あるいはBCG菌で発現させ,この蛋白質の機能の検討を行う. BCG菌の抗腫瘍効果を,人の舌由来の扁平上皮癌の細胞を使って検討を行っている.癌細胞にBCG菌を作用させると,BCG菌は癌細胞に感染し(癌細胞に取り込まれ),抗腫瘍効果が現れた.菌株の違いで抗腫瘍効果も異なり,また,BCG菌は様々な蛋白質を含むため,東京株およびパスツール株の培養上清と細胞破砕液を加え,抗腫瘍効果を検討している.今後は,培養上清と細胞破砕液を各フラクションに分けて,それぞれのフラクションについて抗腫瘍効果を検討し,有効な蛋白質の遺伝子をBCG菌に導入し,組み換えBCG菌を作製していく. BCG菌は直接的な抗腫瘍効果とともにマクロファージを介した間接的な抗腫瘍効果も合わせ持っている.マクロファージを介した実験系は現在準備中で,マクロファージ系の培養細胞と正常人・口腔癌患者の血液から分離したマクロファージを使用して,抗腫瘍効果を検討していく予定である.
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