研究概要 |
BCG菌は直接的な抗腫瘍効果とともにマクロファージ(Mφ)を介した間接的な抗腫瘍効果も合わせ持っている.BCGを培養腫瘍細胞の培地中に加えると,BCGは腫瘍細胞に感染し,増殖を抑制した.BCGは様々な抗原性蛋白質を分泌しており,その分泌蛋白質の培養上清と細胞破砕液を培養細胞を調整し,培養腫瘍細胞の培地中に加えると,培養上清および細胞破砕液は共に濃度依存的に腫瘍細胞の増殖を抑制するが,培養上清にその効果は強かった. BCG菌は細胞内寄生菌であり,主にMφ内で宿主細胞由来の膜成分に囲まれた状態で存在することが示唆されている.菌体成分はMHCクラスII分子のみならず,MHCクラスI分子によってもMφ細胞表面に呈示されるが,その経路はまだ不明な点が多い.BCG菌においては,少なからず抗原(分泌蛋白質)が宿主細胞の細胞質に移行していることも考えられる.そこで本年度は,BCG菌をMφに感染させ,BCG菌を含むファゴゾームと細胞質とに分離し,BCG菌の抗原性蛋白質の分泌移行を検討した. 6-8週齢のマウスより腹腔Mφを誘導分離した後,BCG菌を貪食させた.ファゴゾームおよび細胞質を分離し蛋白質を調整し,SDS-Pageで解析した.LAB-TEKチャンバー付着Mfは固定後免疫染色を行った. BCG菌の分泌蛋白質のうちある蛋白質はファゴゾーム内よりMφの細胞質への移行が推測された.したがって,直接菌体成分が細胞質に移行することによって,細胞内在抗原と同様に処理され,MHCクラスI分子を介して抗原が提示され,CD8T細胞の活性化,細胞傷害活性が高められる可能性が示唆された.今後,BCG菌の分泌蛋白質のMφの細胞質への移行について解析を行う予定である.
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