研究概要 |
BCG菌は直接的な抗腫瘍効果とともにマクロファージ(Mφ)を介した間接的な抗腫瘍効果も合わせ持っている.BCG菌を培養腫瘍細胞の培地中に加えると,腫瘍細胞に感染して増殖を抑制した.このときに腫瘍細胞中にはBCG菌の分泌蛋白質が確認され,抗原提示・細胞障害活性への関与が示唆された.BCG菌は細胞内寄生菌であり,菌体成分はMHCクラスII分子のみならず,MHCクラスI分子によっても宿主の細胞表面に呈示されるが,その経路はまだ不明な点が多い.BCG菌感染においては,その抗原がBCG菌が含まれるファゴゾームから細胞質に移行していることも考えられる.そこで,BCG菌をMφ(マウス由来のMφ系培養細胞:J774)に感染させ,BCG菌を含むファゴゾームと細胞質とに分離し,BCG菌の主要な分泌蛋白質の抗体を用いて,BCG菌の分泌蛋白質がMφの細胞質へ移行するか否かをウエスタンブロットで解析した.また,BCG菌の分泌蛋白質をコーティングした磁気ビーズを貪食させて同様の実験を行った. BCG菌の分泌蛋白質のうちMPB64は,ファゴゾーム中のみに検出されたが,MPB70はファゴゾーム中には認められず,細胞質中にのみ検出された.α抗原はファゴゾームおよび細胞質中にも検出されなかった.磁気ビーズにコーティングした場合は,MPB64は比較的早期に分解され,後期には検出されなかった.MPB70は後期においても細胞質中に検出された. α抗原は非常に抗原性の強い蛋白質で,ファゴゾーム中で速やかに分解され,MHCクラスII分子を介して抗原提示が行われていると考えられた.MPB64も分解速度は遅いがMHCクラスII分子を介して抗原提示が行われていると考えられた.MPB70は速やかに細胞質中に移行し,MHCクラスI分子を介して抗原提示がなされ,CD8T細胞を活性化して,細胞傷害活性が高められる可能性が示唆された.
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